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その勤勉さと叡智で日本は、世界一豊かで贅沢な国になった

清水、僕はいつも考えているのですが、ペリーが浦賀にやって来て、日本に開国を迫ったのはわずか百五十年前ですが。明治維新から百三十五年です。僕は今七十七歳なので、僕の倍もたっていない。長い鎖国から初めて国を開いたら、もうよその国は近代文明が発達していのです。岩倉具視もアメリカやヨーロッパへ行って度肝を抜かれている。そして帰ってきて「これでは駄目だ。日本をなんとかしなければいけない」という時に、金が無いんですよね。戊辰戦争で幕府と官軍が戦って、三井とか鴻池に借金が残っているのです。にもかかわらず、明治の人たちは太政官札を発行して、そして明治六年か七年には外債を募集した。それで造船所は造るし、鉄工所は造るし、紡績所は始めるし、製紙工場も造る。何よりも全国に小学校、中学校、高等学校、大学を造った。そんな金があったかというと無いんですよ。だって日本には産業など無いんですから。しかし開国してわずか十年や二十年の間に陸海軍までつくって、明治二十七年から二十八年には隣国である今の中国の清国と戦った。清国の艦隊を沈めるわ、陸戦でも勝つわ、そして十年たったら、今度は世界一のロシアと戦ったのです。

元谷、すごいですよね。当時の日本人はとにかく気宇壮大で偉いものだと思いますね。清水、では昭和二十年八月十五日に日本が敗戦した、あの時はどういう状況だったのかといいますと、昭和六年の満州事変以来、昭和二十年八月十五日の敗戦までに使ったいわゆる軍事費が今のお金で合計二千兆円です。では日本の政府はお金があったかというと、二千兆円使ったほかに、借金が海外のものも全部含めると三千兆円です。その借金をマッカーサーは「一銭も支払うことはならん」と。要するに踏み倒すのです。戦前の日本というのはものすごく貧乏だったのです。九九%貧乏で金持ちは一%しかいなかった。そんな中であの戦争をやって二千兆円も使い、それが終わった時には三千兆円もあった借金を踏み倒して、そしてわずかな間に世界第二の経済大国を作り上げてしまい、もう国も全部復興したわけです。日本人の勤勉と叡智というのは界に冠たるものですよね。

元谷、明治維新の時には志があったで。先の大戦に敗戦した時には教育があった。敗戦後に教育を受けた人たちは「もう一度日本を経済的に立ち直らせなければならない」という思いがあったのですね。でも戦後はだんだん教育が悪くなって日本精神もなくなり、今は志も無いし伝統的教育も無いことがこの閉塞社会の元凶かな、という気がするのですが。

清水、おっしゃる通りですよ。ただ、有史以来日本の歴史は大体二千六百年ぐらい。今ほど衣食住とも日本の歴史で日本民族がこんなに贅沢をしたことは無いですよね。今、世界で日本人の生活が最も贅沢です。私自身で比べてみても、七十七年の人生で、今が一番恵まれているし贅沢です。ですから、今の人にいろいろと緊張を訴えてみても、本当に切羽詰まって追い詰められていないし、その反面、弱い人は、四年続いて一年に三万何千人も静かに自殺しているのです。これも世界に例が無い。我々の若い頃からずっと辿ってみると、自殺者なんていうのは戦前はほとんど無かった。元谷、貧しい時には、案外無いらしいですね。

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